ライブドア問題の本質

 「お金で買えないものはない」などと、貧乏な私の気持を逆なでしたホリエモン。そして衆議院選挙に自民党の応援を受け立候補した彼が、逮捕された。
逮捕から遡る家宅捜索のとき、検察官を目の当たりにした彼は、ガタガタ震え続けたと言う。瞬間にことの重大さを察知したのだろう。家宅捜索の夜、ホリエモンのブログを開いた。物凄い数の応援メッセージが書き込まれていた。その多くが、翌日の「姉葉偽装国会質疑」のスケープゴートにされたのではないか、との内容だった。
確かに官邸サイドは検察に、踏み込む日にちを指定したのは確かだ。しかしそのことは本質ではない。
また検察は有名人を逮捕したがる傾向がある。有名人を挙げたほうが宣伝になり、効果が大きい。ホリエモンを挙げれば、1メートルの鯛を釣り揚げたニュースより大きい。しかしこれとても、ことの本質ではない。
ことの本質は検察による行政へのレッドカードだ。行政が株価回復に腐心するあまり、法の解釈を甘くしてきた。その行政、とりわけ金融庁への警告だ。
この行政への警告は検察や司法による一連の流れの一環だ。私が以前にも述べたが、自民党が安定した政権を築いたせいで、検察や司法が遠慮なく行政に介入できるようになった。
政府、金融庁ライブドア証券取引法違反案件を、検察より容易に内容を把握できたはずである。しかし金融大臣や総理大臣が、張本人と手を取り合い選挙活動している状況で、ホリエモンに行政指導や検察に告発できるはずがない。
また今や政府の広報機関と化したマスコミに期待するほうが無理というものだろう。検察の捜索以前に、マスコミがホリエモン錬金術を特集した話は聞いたことも見たこともない。マスコミがやっていたことはホリエモンをスター扱いにしていただけじゃないか。
誰の目にも明らかな偽計取引を形式的な法律論で見逃して来たのである。例えば株式分割だ。細かく株式を分割しておいて、株券の印刷などで売却や転売をしにくい状況を作っておいて、粉飾で株価を吊り上げ、自分達だけが売り抜ける。そんなことが許されるはずがないのに、「法律スレスレの手法だ」「問題ではあるが証券取引法違反ではない」と金融庁は認めてきたのだ。
今回の騒動でライブドア関係の株式運用で損害を出されたかたは、ある意味金融庁の被害者だ。金融庁が正常な指導をした上での株暴落であれば自己責任と言える。しかし今回は金融庁の責任だ。当然金融庁に損害賠償請求ができる。ひょっとすると誰かが損害賠償請求訴訟を起こすかも知れない。
ホリエモンは逮捕の夜、パソコンを拘置所に持ち込めないか聞いたそうである。勿論許可されるはずもないが、もし許可されたら拘置所からブログ発信の最初の人になるところだった。 ホリエモン自民党と友好関係を築くことで、金儲けがスムースに運ぶよう画策した。そして自民党ホリエモン人気を利用した。
検察は両者の蜜月関係に目もくれず、逮捕に踏み切った。彼ら検察は「金融庁がだらし無いから俺達がやらざるを得ないだろう」と語っているようだった。