憲法改正、どこかおかしいぞ

            2005/3/13(日) 午前 1:27

最近憲法改正がにぎわしい。私なりに、改正論の要点をまとめると、
1:国は固有の自衛権を持っている。現有の自衛隊は実質軍隊だから、新憲法では自衛権としての自衛軍を明記すべき。
2:改正後、日本の自衛軍が海外派兵する場合は、国連決議がなされた場合に限るから、軍国化の心配はないから改正してもいい。
3:憲法改正の手順を、改正しやすい方向で改正する。
大雑把に言えばこんなところだろう。私は上記の案なら、憲法を改正してもいいと思っていた。ただしイラク戦争前までは。ご承知のようにイラク戦争では、わけの分からない国連決議を持ち出し、イラク進撃をアメリカは決行した。日本政府もそれを追認した。このことを改正案新憲法に当てはめるなら、日本の自衛軍は堂々と戦争参加できることになるのだ。こんないい加減な話はない。
それに憲法改正をたやすくすれば、次に控えている、様々な改正案がどんどん認められて、あっという間に、太平洋戦争以前の日本に逆戻りだ。
そもそもアメリカが何故イラクに進撃したかだ。第一の理由は、イラクアメリカの言いなりにならなかったからだ。イスラム教の国とか石油利権とかネオコンの問題はつけたしである。
アメリカは双子の赤字を抱える債務国だ。もし各国がアメリカ債権を放棄したらアメリカは一夜で潰れるのだ。どうしてもアメリカの言いなりになってもらわないと困るのだ。だから大統領がブッシュでなくても、何らかの制裁をイラクに対してしなければならなかったのだ。
ただ今回のイラク攻撃はなりふり構わぬものだった。アメリカにとって失ったものの方が大きかっただろう。しかしアメリカにとっては世界の覇権を保てたメリットには代えられない。そこまでアメリカは切羽詰っている証拠だ。
アメリカが豊かだった頃は、日本の自衛隊など眼中になかった。だから憲法もいじる必要はさらさらなかった。しかしEUが結束しアメリカに対抗する勢力を持ちつつある現在、アメリカにとって日本は、お金だけ出して済む国ではなくなってきたのだ。憲法改正アメリカの希望でもあるのだ。
「日本が今の自衛隊だけで、もし外国から攻められたら守り切れるか?」と改憲論者はいう。答えは「守り切れない」だ。犠牲も出るだろう。しかし日本が戦前、十分な軍隊を持っていたとき、自国を守れたかと問うとき、守るどころか目茶苦茶になった歴史がある。日本が理不尽な攻撃を受けたら、世界も味方するであろうし、自衛隊だって必死に戦うだろうし、多くの国民は志願して隊員となるであろう。
現行憲法下では自国を守るための自衛隊の装備は合憲とされる。だったらそれでいいじゃないか。
小泉総理は、「今の自衛隊は明らかに戦力だ。だから憲法のいう、戦力の保持はしない、という憲法に合致しない。だから憲法を変えたほうがいい」といった。だったらイラク派遣をした政府の行動と、それこそ矛盾するではないか。
結論として、現行の憲法で充分だ。現憲法下でアメリカの要請で外国へ自衛隊の派遣の必要が出た場合は。誰もが納得する国連決議がある場合は自衛隊が出て行けばいい。イラク戦争のように曖昧な決議のときは、またはアメリカの覇権が理由の場合は、アメリカに協力する姿勢を示すため、海上保安庁警察庁が出動すればよい。イージス艦や輸送機は自衛隊が貸与すればいい。
問題はアメリカを怒らせたら、日本の経済が減速するディメリットをいかに避けるかだ。そのときははっきりアメリカに言えばいい。「国連決議はない。しかし日米関係を保ちたい。だから警察庁海上保安庁を派遣する」と。そうすれば国民は納得して彼らを現地に送り出すであろう。ただし戦争賛成者はどんな場合でも自衛隊の派遣を主張するだろうが。
日本の歴史ではこんなことを示唆している。日清戦争の勝利で日本は当時のお金で3億円を手にした。
その味が忘れられずに、日露戦争では充分な賠償金が取れなかった。そのとき国民はそのことに怒ってデモをしたほどだ。しかし賠償金が取れなくても、もっと大きな賠償金を得るため、戦争を拡大した。このことをアメリカに当てはめれば、イラクでは出費のほうが大きかったからといって、戦争を縮小するのではなくもっと大規模な戦争をたくらむものなのだ。
日本がアメリカの従属国であるのは悪いことではない。ただ国連決議に象徴される国際世論が、そっぽを向いたときは、自衛隊は出動させず、代わりに警察がいけばいい。足手まといになったって構わない。アメリカが欲しいのは日本の協力姿勢なのだから。