知的財産権「シャル・ウイ・ダンスとスイング・ガールズ」

最近知的財産権の司法判断を下す裁判部門が新設された。でも末端ではまだまだ無許可モノマネが横行している。
その代表例が映画界で見られた。映画を通し、これほどはっきりオリジナリティの侵害についての差が出た例は珍しい。警鐘の意味で提示したい。シャル・ウイ・ダンスとスウィング・ガールズだ。
事情がわからない方のために説明しよう。
シャル・ウイ・ダンスは日本の映画で1996年に封切られ、数々の映画賞を受賞した。役所広司が好演し、いい映画だった。その映画を基本にアメリカで昨年、題名も同じ、シャル・ウイ・ダンスとして封切られた。アメリカ版は主演にリチャード・ギアがなり、ストーリーもほぼ日本版を踏襲している。アメリカ版の製作に当たっては日本版の版権所有者と話し合いがあったことだろう。その証に題名を同じにしている。アメリカ版側の正々堂々とした態度だ。
さて他方の例のスウィング・ガールズだ。これは日本の東宝の作品で、女子高生がひょんなことからジャズバンドを結成し発表して喝采を浴びるストーリーだ。しかし作品イメージといい、ストーリー展開といい、似ているのである。アメリカで製作されたスクール オブ ロックに。しかしアメリカ版を意識してか、ロックをジャズに置き換え、指導役の先生をアメリカ版では売れないロッカーを設定したのに比べ日本版では、ジャズに詳しいが演奏は駄目の先生を設定している。
私の評価ではアメリカ版は5つ星、日本版では確かに感動はあったが、せいぜい4つだ。問題は日本版の製作態度だ。ひとことで言って汚い! 知的財産権を守ろうとする気概が感じられない。こういう盗っ人モノマネ根性が日本映画を駄目にする。何故堂々とアメリカ版の版権所有者に了解を求めて、アメリカ版のリメーク製作をしなかったのだ。そのほうが遥かに受けたことだろう。スウィング・ガールズの製作者が、スクール・オブ・ロックを見て、おもしろいと感じ、日本で似たような映画を作りたい気持ちになるのは理解できる。しかし、いいと思った映画の基本プロットを真似たら、それはパクリになる。
分かり易い例で示そう。ロックのある曲がヒットしたとしよう。それを聴いたジャズ作曲家が、そのヒットしたロック曲に似たイメージでジャズにアレンジして発表したようなものだ。ジャズ作曲家が「私の曲はジャズで、似たとされる曲はロックだから、全然違う」と言っているようなものだ。
監督さん、あなたの名前は「模倣する人」として永久に私のリストに刻まれた。もし監督の反論があれば、コメント欄に書いて下さい。