列車事故の責任は国交省だ

ずばり断言する。今回の福知山線列車事故の原因は国土交通省の責任だ。国交省からの天下り、持ちつ持たれつ関係が、JRや私鉄各社に甘い指導を続けてきたつけが、事故を引き起こしたのだ。
今回の責任を、兵庫県警によるJR関西への管理責任追及という、上っ面な処置にだまされてはならない。この処置で一番喜ぶのはJR関西なのだ。
ではどういう国交省による処置がいいのか。その第一は、すぐ自動速度制限装置の設置だ。設置がすむまで列車の運行は許可してはならない。第二はガード・ウォール(ガードレールではない)の設置だ。曲線、直線を問わず、線路の両側各30メートル以内にマンション等の危険な建造物があるところでは、頑丈なコンクリート壁のガードウォールの設置を義務付けよ。
最低限この設備の設置を強制してほしい。
事故は確率論によって起こる。起こる頻度もそうだ。人為ミスはゼロにすることは出来ない。0.1パーセントの人為ミスは避けられない。それを補うのがATSなどのフールセーフ装置だ。機械の故障もやはり0.1パーセントほど存在する。しかし設置した後の総合事故発生率はそれらの積になるから、1万分の1パーセントとなる。これで事故防止といえるのだ。
ところが今行われようとしている事故防止処置は、県警による「管理教育体制の強化」指導だ。こんなことをしたって現在の事故率と変わらないのだ。もし変わるというなら、なぜ前回、列車正面衝突事故があって、そのとき管理指導をしたのに、今回の福知山線事故が起こったのか説明してほしい。
私の目からは、新聞やテレビが、今回の事故の原因を、列車運行や運転士の管理の問題ばかりを指摘するのかが分からない。
ほかの例をあげよう。消防による火災防止だ。
消防と一般のビルとは、天下りも、利益関係もないから正しい消防による指導がなされる。すなわち火災が起きたときに対処する消火設備の設置のみを重視する。各ビルの防火管理者の勤務体制とか従業員への日常の教育は二の次だ。消火設備さえ法的に合っていれば、被害は最低に抑えられることを一番良く知っているのだ。
今回の列車事故で、JR側は早々に「ATSの設置を進めたい」と表明している。ATS設置の世論が沸き起こる前に、ポーズだけでも示そうという事前防御策だ。もちろんJRは、徐々にだが設置を進めるだろう。しかしそれでは遅いし不完全なのだ。
鉄道業者は腹の中で、「列車は長くは止められない。だから国交省も強くは出られない筈だ。しかも私のところには国交省のOBがいっぱいいる」ときっと思っている。
復習してみよう。早期の段階で、JR側の責任者がなぜ「あのカーブは130キロ以内の速度では脱線事故は計算上起こりません」といった訳を。それは、そう答えるより言い方が無かったからだ。もし110キロでカーブを走行したら脱線の可能性があります」と答えたら、自動速度制限装置が必要です、と言うことになるのだ。そうしたらATSを設置しなくてはならなくなり、設備投資が必要になるからだ。
JRの経営者は、今回の事故処置が、数名の責任者の逮捕と、管理運行の教育指導の徹底と、将来のATS設置計画書の提出で、解決することを望んでいる。
しかしその処分では事故は再び数年以内に再発する。断言する。