年金問題と民主党

年金問題で疑問に思っていたことがあった。
民主党が消費税アップを財源にスウェーデン方式を提唱したことはいい案だ。民主党の年金提案は国民の理解もあり現実的だ。問題は民主党自民党と協議のテーブルに乗ってまで何故こんなにも熱心かだ。
民主党は「自信がある提案だから、自民党と協議してでも実現に動くのは当然」と言いたいのだろう。
しかし政権与党は自民党だ。自民党のいいどこ取りの結果は目に見えている。民主党案のいいとこだけを利用するのだ。もし民主党案を利用するメリットがなければ、経済政策で見られたように、自民党民主党案をパクればいい。協議など必要ないのだ。
では自民党民主党の年金協議で両党のメリットは何か?
自民党のメリットは、消費税アップの反発を民主党に転化できる点だ。消費税アップは民主党の発案だから消費税アップの責任は民主党だと主張できる。これで選挙での大敗を回避できる。これは自民党にとってタナボタ以外の何物でもない
では何故民主党は、明らかに自民党の喜ぶ両党協議に熱心か? 理由は2つ考えられる。
1番目は、支持母体からの要求だ。支持母体の官公労や同盟は、年金改革が進まないと年金掛金は上がり、支給額は減り続ける。財源に消費税を充てれば、大衆課税により財源が担保され、年金の掛金や支給に有利になる、と踏んでいると思われる。
2番目が、管元代表が辞任に追い込まれた時に、自民党と党約束をしてしまったからだ。 何故党約束したのか? それは自分の後任人事に「たが」をはめたかったと思われる。自民党との協議約束を交わして置けば、後任には小沢一派は名乗り出ないとの読みだ。
結果として、後任代表に幹事長だった岡田氏が就任した。管氏の作戦は成功した。
ここで皆さんは不思議に思われるのが「民主党は年金案でいい物を持っているんだから、堂々と選挙にすべてをかけ、政権をとってから自分達の年金改革案の実現に動かないのか?」と。
ここがポイントなのだ。民主党が市民の代表だという市民感覚政党であれば、当然そういう行動を取る。でも労組政党の感覚政党だとそうはならないのだ。労組は経営者ではないから、適当に経営者にたてついて労働条件のアップを狙う。それを政党にあてはめれば、野党に安住して与党にたてついて、甘い汁をすするのだ。民主党は年金政策に限っては、労働組合政党になっている。
年金問題は大きな社会問題だ。年金財源をどうするかの問題だと言っていい。
しかし市民の立場から言わせてもらう。年金財源が逼迫したのは市民の責任ではない。だから消費税アップの被害をまともにかぶるのは承服出来ない。財源が不足というが、国債発行(国の借金)は小泉政権になってから一層増えている。高速道路だって予定道路を全部造ることにしたではないか。そうやってじゃぶじゃぶ使っておきながら、財源がないから消費税アップの結論では承服出来ない。
私は外国滞在経験がある。イギリスにいた時、すでにVATは10%を超えていた。買い物をしてVAT(付加価値税:消費税相当)の高いのにがっくりきた。高い消費税は西欧では当たり前だが、決して国民がココロヨシとしているのではない。
また日本からの製品輸出においても約5%消費税が上がれば、輸出価格がそのぶん上がる。言い変えれば、5円の円高になるようなものだ。更に消費税アップが、確実に消費を冷え込ませる。
年金財源問題は確かに、大きい。だけど「財源は、はい消費税で」、といわれて「はいそうですか」と二つ返事するほど市民は馬鹿ではない。課税方法、出費の削減、財源の流用などありとあらゆる方法を議論した上でないと私は到底納得いかない。
民主党に最終警告だ。政権を取りたいのなら、市民政党に徹せよ。それを年金問題にあてはめれば「民主党の年金案は自信がある内容だ。実現したい。しかしその実現には責任がある。野党のままでは自民党にいいとこ取りされる。だから政権をとったら実現したい」という立場を貫け! 今のようなフラフラした態度だったら、自民党政権の方がましだ。
市民は労働者で、逆に労働者は市民だ。だから同じではないかという考えがある。だから、正確にいおう。組織労働者のための党か、未組織労働者を含めた労働者のための党か、の違いだ。私の定義は、未組織労働者を含めた労働者のための政党を市民政党と呼び、組織労働者のための政党を労組政党と呼ぶ。
民主党の支持母体である同盟は、「何故非組織労働者のために政策を転換せねばならないのか?」と言われる方もいよう。しかし非組織か組織かの違いは、労働組合の組合員資格の規定の問題に過ぎない。民主党の支持母体が「すべての労働者のために民主党の政策を打ち出そう」という、市民政党の立場をとれば、大勢の市民の応援を得て政権が取れる。逆に、組織労働者の利益を優先する、組織政党の立場をとれば市民の多くは「民主党さん勝手にやってください」という立場になり、民主党は万年野党だ。
イギリスは労働党が政権をとっている。だから市民政党になりさえすれば政権は取れる。
民主党が市民政党を選ぶのか、支持母体政党を選ぶのかは、選ぶのは民主党の議員一人一人だ。
そして民主党議員に対する、そのリトマス試験紙は「政権を取りたいのか」と「適当な見返りさえあれば野党でもいいと思っている」のかで判別される。というのは、支持母体派の議員でも「あなたは市民派ですか?」ときくと「もちろん市民派ですよ」と答えてしまって、「市民派」対「非市民派」の判別法は曖昧だからだ。
イギリスは労働党のブレア政権が再選された。このことは市民政党になりさえすれば政権が取れる事を立証している。だから少なくとも民主党の執行部だけは、政権奪取に血を沸き立たせる熱血漢で固めてほしい。

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この文を、民主党参議院議員、ふじすえ健三さんのホームページのコメント欄に掲載したところ、ふじすえさんからレスコメントを頂きましたので、ここに転載させていただきます。

矢島さん
まず、民主党は、「市民が主役:民主党」でやるべきだと私も思っています。つまり、既得権益の保護の自民との対立軸として、市民のための政党を打ち出すべきだと思っております。そのためには、きちんと分析された政策を創らなければなりませんが、まだ、その体制が十分にできたとはえいないと思います。
また、年金は、ただの一般論になりますが、①高齢者の方の幸福と②財源の整備、が課題だと考えます。高齢者の方の幸福は、高齢者医療、福祉、そして年金を総合的に考える必要あります。財源は、今、粛々と勉強していますが、大きな道筋としては、時価及び連結決算の政府のバランスシートを作り、どれだけ負債があるかを明確にし、政府資産(事業、不動産、知財権など)を売り、そして、歳出の削減、その最後に「増税」としなければみなさんに納得いただけないと思います。
ご指摘のように、市民の政党にならなければ政権は取れません。政権を取れなければ私たちが作っている政策もただのアイディアで終わってしまいます。なんとしても政権を取って、世の中をよりよくしていきたいと思います。 ふじすえ健三

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ふじすえ議員に対し矢島慎のレスです。同サイトからの転載です。


藤末さんの真摯な対応に僅かな期待が抱けます。今民主党は、結党当初の「風が吹いた」勢い以後の踊り場に来ています。このまま政権奪取に登るのか、踊り場に留まるかの選択場面です。浮動層はじっと民主党を観察しています。
観察ポイントは、藤末さんの言われる「既得権益の保護の自民党」とどう対決するのか? ではありません。観察ポイントは「民主党内部の既得権益グループ(主に労組代表グループ)とどう対決するのか?」を見ています。民主党内の対決を曖昧にしたまま(市民サイドに完全に立たないまま)自民党に対決できっこないと思っています。
現状をはっきり言ってしまいましょう。自民党既得権益市民派の比率が、7対3ほどです。民主党は結党当時、既得権益民主党の場合は官民労組権益)対市民派は3対7でした。だから選挙で勝てました。しかし最近の民主党はその比率が6対4です。自民党は小泉効果で、その比率は6対4ほどです。自民と民主は拮抗しています。そこへ公明が自民に加わり、補選の勝利につながりました。
ここで民主の既得権益者の意見を入れることが、「そんなに浮動層の不支持になるのか?」と考えられると思います。これは修羅場を経験しないと分かりません。たとえばある会社で、A組合員が組合規約問題で、「組合員資格をアルバイト、嘱託全ての従業員に広げよう」と主張したとしましょう。Aさんに会社からの攻撃がくるとお思いでしょうが、それは間違いです。まず攻撃がくるのは組合執行部からです。
このように民主党内の官民労組代表の力を侮ってはなりません。民主党市民派への動きに体をはって抵抗します。だから不動票はじっとその動きを見ているのです。小沢副代表の「地元での活動重視」はとてもいいことだと思います。これは逆説で、官民労組代表議員は列車事故のときの議員の労組会合への参加でも分かりますが、労組会合へは優先しますが、市民会合へは出たがりません。だから日常活動でチェックし、彼らを是正しなければなりません。
小沢さんはある意味修羅場をくぐっているから、このへんのことが分かるのだと思います。悲しいかな私を含め市民派は、選挙で投票するとき、自民党(公明を含む)、民主党、棄権、この3つの選択肢しかありません。どうか頑張ってください。
投稿者 矢島慎 : 2005年05月15日 12:20



ふじすえ議員のレスです。同サイトからの転載です。

矢島さんがんばります。最近、周りの方々からご指摘いただきますのは、「民主と自民の違い」です。やはり、2大政党として明確な選択肢を示すこと(「市民VS既得権益」「大きな政府VS小さな政府」など)を至急やらなければいけないと感じます。まだまだ党内で下っ端ですので、早くある程度のポジションにつければと思っております。




同ふじすえ議員への矢島のレスポンスです。

応援しますので頑張ってください。
「自民と民主の違いを明確にする」意見はふじすえさんの持論でもあるし、ある意味的をえていると思います。
でも1、「共産党のほうが違いが明確なのに世論の支持がうすい」。
2、「もし自民が民主に近づいたら、民主は違いを優先するためスタンスを変えるの?」。
3、「例えばトヨタとホンダで、ホンダはトヨタとの違いを目指して戦略立てたら負けてしまいます。後発は新開発あるのみです」。
とうとうの疑問が湧きます。ふじすえさんの主張は、「自民は既得権益を代表する党だから、民主は市民層を代表する党を目指す、という意味で違いをアピールする必要がある」との意味だと思います。繰り返すようですが、本当に民主が市民を代表していれば、心から「違いをアピールして!」とエールをおくるのですが、以前に述べたように現在の民主党は「完全に市民の立場に立っていない」と思っています。
そういった状態で、違いを出そうとすると、戦略を間違える可能性があると思うから、しつこく述べているのです。結局、市民の立場に立たないまま、違いをアピールしようとすると、現在とっている「欠席作戦」とか、「揚げ足取り作戦」になってしまいます。
政策戦略の点でも、違いを優先しようとすると、自民・民主の提案内容が似た内容の法案審議は、おろそかになってしまいます。自民党の参謀陣は先刻、民主の「違い作戦」は見抜いています。私の見方からすると、自民は「郵政民営化」でいま危機にあります。党内を取りまとめるため、党内への脅し作戦を展開中です。この自民の危機に、民主は「反対、審議拒否」の一点です。自民にとって、これほどありがたい態度を取る野党にお礼を言いたいぐらいでしょう。
岡田代表は、さすが民主の欠席作戦が世論の支持を得ていないことに気が付き始めています。だから私の予想では、民主は来週早々から、審議参加をすることになると思います。国民誰もが審議拒否する民主を、「昔の社会党と一緒じゃないか。民主も変わってないな」と思っています。そう思っていないのは、民主党の議員だけです。
「違い違い」と主張しながら「違ってない」のだからおかしいと思わないといけません。物事は厳しく見なければいけません。もし私の予想が当たって、来週にも審議参加することがあったら、この二週間、審議拒否の間違った作戦を立てた執行部の、作戦を立てた根拠を徹底的に問いただしたいと思っています。
根拠が示せなかったら、思い付きで作戦を立てたことになります。思いつきで政治をする党には国民は付いていきません。危なくて信頼できないと思うのが普通です。
自民は政権を握っていることを自覚しないといけません。マスコミも(テレ朝以外は)全部自民よりです。新聞も週刊誌も、皆そうです。厳しい中で勝つために、是非頑張ってください。
投稿者 矢島慎 : 2005年05月26日 21:21