10日付朝日新聞社説に反論する

 8月10日付朝日新聞社説に反論する。同社説の主旨は、郵政民営化の従来からの主張を述べ、今回の廃案結果を残念と言う。そして反対勢力の矛盾点を指摘し、更に民主党の郵政取り組みの態度を批判して締め括っていた。 (朝日新聞社説閲覧http://www.asahi.com/paper/editorial.html

私は郵政民営化法案に対しては、朝日新聞社説の主張に近い持論だ。その立場からでも朝日新聞社説の主張に疑問を抱く。
郵政民営化法案を成立させたいのであれば、成立させる方向での論調を展開するのが筋ではないのか。今回の法案は衆議院を通過した法案だ。あとは参議院を通過させれば成立する法案だったのだ。言うまでもなく参議院では自民党公明党を合わせれば過半数を越えている。党内論議を進めれば法案が通過する可能性は高かったのだ。
具体的に政府の選択肢は限られていた。しかし参議院での継続審議に付していれば、まだまだ成立する余地を残していた。
本当に法案成立を望むのであれば、継続審議を主張するのが筋ではないのか。その意味で、継続審議をせず廃案処理をした政府を何故批判しないのか。
またもう一つの選択肢も残されていた。参議院で否決されたとしても、もう一度衆議院に差し戻し、衆議院の3分の2以上の賛成があれば可決するのだ。ここまでやった上での解散ならば国民も投票に当たって判断が下しやすい。
承知のように政府は、法案成立を早々に諦め、自民党内の権力闘争に切り替えた。この判断は自民党執行部が党内事情を踏まえての判断だからとやかくいう筋ではない。
しかし朝日新聞社説が今の時期に、「民営化の灯を消すな」のタイトルで前述の主張を述べるのは、自民党の党内事情にまで踏み込んだ主張ではないのか。
今回の衆議院総選挙で自民党は「郵政解散」と位置づけている。しかし自民党が大勝しようが大敗しようが、参議院での勢力地図は変わらない。だったら郵政民営化法案の成立には関係のない話だ。それほど廃案処理をした影響は大きいのだ。
ゆうまでもなく今回の郵政民営化法案の審議は、初めから終りまで、自民党においては、郵政族議員と民営化議員との対立を内包していた。
そして参議院で採決して否決された。反対した個人は全て党所属の議員だ。だったらマクロ的に見れば自民党は法案に反対したことになるのだ。造反した議員がいたとしても、それはあくまでも自民党の内部事情だ。ましてや国会終盤で、否決の読みが濃厚になっていたとき、法案否決そして廃案覚悟で採決に踏み切ったのは、自民党執行部だ。
その点からも朝日新聞の社説は誤りだ。もう一度正確に述べれば、郵政民営化法案を参議院で否決したのは自民党だ。勿論公明党以外の野党も反対した。しかし野党は衆議院でも、始めから反対していたことだから、いまの時点でとやかく言うのは、論点のすり替えである。
朝日新聞社説は、あたかも自民党が、あらゆる努力をしたあげくの末の民営化法案廃案に対する意見を装っている。だが現実は、今や自民党派閥抗争における森派への肩入れに過ぎない。
 正しくは、自民党執行部は、参議院での採決の三日前辺りから、参議院採決を自民党執行部への支持か否かの「踏み絵儀式」に利用したのではないか。それに対しても朝日新聞は何も述べないのだろうか。
 自民党は今回の総選挙を郵政選挙と位置づける。マクロ的にもう一度述べれば、自民党参議院郵政民営化法案を否決した。そして今回は、否決理由は派閥抗争だった、その対抗派閥を排除したからその評価をしてください、と言っているのだ。
この点こそ朝日新聞社説が批判すべき内容ではないのか。私はそう主張する。