9月11日総選挙以後

 衆議院総選挙以後を予想しよう。小泉政権は自民・公明の与党が過半数を獲得し従来の自民党政治が継続される。民主党議席を伸ばす。
 問題は郵政民営化法案だ。小泉総理の公約どうり、法案は衆議院に提案される。1ヵ月の審議の末、衆議院で可決される。問題は参議院だ。自民党は先の参議院否決劇の再現は避けなければならない。ご存知のように参議院議員の構成は以前のままだ。さて考えられる選択肢は少ない。自民党の考えられる選択肢は。
1:民主党の賛成者を誘う。
2:反対派にアメかムチを与え態度の変更を迫る。
この2つしか考えつかない。

 まず1案を検討しよう。確かに民主党の中に郵政民営化法案の賛成者はいる。しかし先回の参議院採決では民主党は1人も脱落者を出していない。また今回の選挙では民主党議席を伸ばすと予想されている。それを考えると1案は可能性はうすい。
 2案であるが、先回反対した自民党参議院議員が今回賛成に回る可能性は低い。ちまたの意見で、離党処分を出されるのが怖いと思う参議院議員が現れるのではないか、との希望的意見がある。しかし小泉総理は自分の任期は延長しない、と明言している。ということは次回の参議院議員選挙は別の総裁の基での選挙だ。だから何も怖くない。
 また前回の議決で、反対の青票を投じた自民党参議院議員が、今回賛成票をとうじることがおこり得るだろうか? たかだか1、2ヶ月の経過で、やすやすと態度が変わったら、議員の威信が保てない。
 結局郵政民営化法案は再度否決だ。そして小泉総理は、今度は辞任だ。
ここで国民はやっと気付くことになる。小泉さんに振り回されたことを。
 振り返ってみると、小泉総理のプランが今になってはっきりした。小泉総理は、一応郵政民営化法案が衆参両院で可決されると思っていた。そして、可決後に衆議院を解散するつもりだった。そして、予定どうり、亀井、綿貫らの強硬派を党から離党させ、凱旋選挙で勝利し、残る任期をまっとうする予定だったのだ。
 今にして思うと、もし小泉総理の目論見どうり進んでいたら、民主党はえらい目にあっていたところだ。
 小泉総理は、そのスキームを立て、内心わくわくしていたはずだ。ところが前回の参議院採決の直前で、否決の読みが出されても、もう方針変更はできなかった。それは亀井、綿貫らの、にっくきライバルを蹴落とす手順に、完全に小泉総理のフォーカスが当てられていたからだ。その勢いで、後先考えずに、継続審議の意見も無視し、解散に突っ込んでしまったのだ。
 今現在の小泉総理の頭の中には、選挙後の国会で、参議院で否決されたらどうしよう、との冷静さはない。街頭演説での小泉総理の表情に、かっての余裕は感じられない。鬼と化している。豪雨が降りしきる中を、走り続けているだけだ。雲の向こうの景色を描くことができていないのだ。
 次に、次期国会で、参議院に送られた郵政民営化法案が、採決にかけられたとする。そして前回を同様に、採決の2日前に情勢分析なさなれ、否決が濃厚になったとき小泉総理はどうするのだろう。
 継続審議か、採決強行か、再び同様なことが再現される。採決強行であれば、同様否決で法案は永久廃案だ。
 しかしそのときは、小泉さんは継続でも廃案でもどちらでもいいと考える。というのは、にっくき亀井、綿貫らの反対議員はもう自民党にはいないのだから。継続にしたとしても、自分の残された任期のことを思えば、成立の可能性はない。そうだとすれば、採決し否決され、そして辞任だ。
 囲碁の世界で、「投げ場を求める」というのがある。碁の勝負で殆ど負けかけている状況で、一か八か起死回生の賭けにでることをいう。大抵、起死回生のもくろみは外れて、やっぱり負けるのだ。
 これを小泉総理に当てはめれば、今回の解散、総選挙が「投げ場を求めた起死回生の勝負手」だったような気がする。本来、前回の参議院採決で否決されたときに辞任するのが筋だったのだ。
 そのまま辞任すると、亀井、綿貫らに負けたことになるし、万が一総選挙で大勝し事態が動くかもしれない。そう小泉総理は思い、起死回生の大一番に打って出たのだ。私から見れば、それこそが投げ場を求めた賭けだったのだ。
 一方、投げ場の起死回生の策に出られた民主党にとっては、冷静に対応せねばならない。相手の術中にはまると、逆転の渦に飲み込まれ、勝勝負を失うことになる。ここは冷静に、政策、マニュフェストで堂々と戦わなければならない。
 
 私は、いろんな人に今回の総選挙について意見を伺っている。そして意外と総選挙に肯定的な意見が多いのに驚く。それら肯定者の意見は、面白いことに小泉総理と全く同意見なのだ。それら多くの小泉同調者も、やはり「投げ場」を求めているのだ。(勿論本人たちは決して投げ場とは思ってみえないが。)
 そして、「次回の参議院採決で、可決するなにかいい方法がありますか?」と問うと。答えは異口同音、「小泉さんが選挙で勝てば、自民党参議院議員の反対者も、考えを変えて賛成に回るのじゃない」と楽観論をのべるのだ。これも小泉さんと同じである。
 繰り返すが、小泉さんの楽観論は、前回の参議院採決で完全に崩れているのだ。