シリーズ:おかしいじゃないか・その5 「輸入牛肉問題」

 あれは2年前のことだった。アメリカ産牛肉BSE問題が発生したとき、政府は当然のこととしてアメリカ、カナダ産の牛肉輸入をストップした。その際、国内での牛肉の値段が上がることを心配して、オーストラリア産の牛肉の輸入を増やすよう各方面から要望が出された。
 しかし政府はセーフガードを発動させ、オーストラリア産の輸入量が対前年度比を上回った分の関税を上げた。セーフガードとは対前年度比で一定量を越えると、高関税をかける制度だ。国民はその分高い輸入牛肉を食べさせられた。私の記憶では、1割から2割、輸入牛肉の値段が上がったことを覚えている。
アメリカでBSE問題が起きたことを考慮して、オーストラリア産牛肉を増やしてほしいという声が各方面で上がった。しかし政府はがんとしてその声を無視した。政府としては国産牛肉業者に配慮したことだったかもしれない。
 そして今回、小泉総理とブッシュ大統領の会談でアメリカ産牛肉の輸入が話し合われた。20ヶ月未満の牛肉の輸入が再会されることとなった。しかしアメリカ産牛肉に対してもセーフガード問題が横たわっている。2004年度のアメリカ産輸入牛肉量はゼロだ。今年から再開するとしても、高関税はあたりまえと見られていた。
 しかし政府は、原則もへっちくりんもなしだ。セーフガードそのものを変更するといいだしたのだ。高関税にしたらブッシュの機嫌が悪くなるから、従来の低関税で行こうというのだ。何なんだこれは! こんなに簡単にセーフガードが変更できるのなら、何故2年前にオーストラリア産牛肉の輸入量アップのときにセーフガードを外さなかったのだ。おかしいじゃないか。
 政府が、好きなように制度の運用をするのは今に始まった事ではない。しかし今回の輸入牛肉問題は国民の安全の問題だ。最初は全頭検査しないと輸入しないと言っておきながら、20ヶ月未満の牛肉は安全だと勝手に決め付けて、しかもセーフガードも無視して、ひたすらブッシュの言いなりになるっておかしいじゃないか。
 そもそも20ヶ月未満の牛肉といったって、ある説では20ヶ月以上の牛肉が混入される可能性は数パーセントあるというじゃないか。そんな危ない食品を誰が食べるものか。
 私は現在、毎週1度は牛丼をたべる。並の量で350円だ。勿論オーストラリア産牛肉使用だ。味は悪くない。牛丼屋も、政府がオーストラリア産牛肉にセーフガードを適用していても、頑張って350円で提供してくれている。これで充分だ。
 しかし政府も、もうちょっと原則とかポリシーを持って行政をしてくれと言いたい。選挙に大勝したから「何でもあり」というのでは余りにも露骨ではないか。